中国での大規模なデータと日本を含む世界のデータはほぼ同じ傾向です。
つまり、新型コロナウイルスは「年齢が高いほど死亡率が高くなる」ということです。
ニュースでは若い方の重症・死亡例などが報告され印象に残りますが、統計的にはそういうケースはまれです。これらの背景となる要因は免疫と言われています。
1.加齢と免疫
生体の働きは、発生から老化に至るまで加齢とともに刻々と変化します。赤ちゃんから青年になり高齢者になるとそれ相応の容貌に変化していくことと同じですね。
免疫系の場合にも発生の段階で血液幹細胞が様々な細胞型に分化成熟した後、老化の道をたどります。
シンプル免疫学 南江堂
2.ウイルスと免疫
新型コロナウイルスは新しく出てきたウイルスであり、世界中ですでにかかった人はいないはずです。つまり、(獲得)免疫が成立している人はいない前提での生体反応は以下となります。
ウイルスは、宿主となる細胞に感染してそのシステムを利用して自己増殖を行う特徴を持っています。それに対して、ヒトは感染早期ではウイルス粒子に対してマクロファージによる貪食、インターフェロンα、βによるウイルス粒子の合成阻害、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)によるウイルス感染細胞の障害で感染防御を行います。
3.免疫力を高める方法=生体応答修飾薬
オーストラリアの研究機関は、新型コロナウイルスに有効かどうかを確認するため、結核予防に使われるBCGワクチンの臨床験を行うと発表しました。
これはオランダナイメーヘン大学のグループがBCGがIL-1βを介して造血幹細胞のエピジェネティック状態(免疫における生態系)を変化させることで、長期間続く高い免疫状態が維持できる可能性を報告したことなどによると思われます。
厳密には異なりますが、大雑把にとらえればこれは免疫賦活薬 biological response modifiers(BRM)と考えるとわかりやすいです。BRMは新型コロナウイルスのようにある特定のウイルスに対するものではなく、幅広く対応する抗原非特異的な免疫応答(相手は何であれ侵入者を撃退する方式)を増強する方法で本来はがん治療効果を期待されていました。
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BRMの原型はBCGやPropionibacterium acneなどの菌体成分をヒトに投与し、マクロファージからのサイトカイン産生の亢進、抗原提示能力の増強、補助膜刺激分子の発現増強などが考えられています。
世界にはBCGを接種していない国が多くあり、BCGをすることで新型コロナのパンデミックの拡大や患者の重症化等が防げるのであれば、ほとんどの国民がワクチン接種を行っている日本には心強いニュースになりますね。