老化の原因の一つは「体内で起こる慢性炎症」である。
炎症はがんの原因になるし、さまざまな病気の入り口となる。
新型コロナウイルスについては、免疫力低下につながると私は考えている。
そこで、私が注目した「タケダ緑の習慣」の研究データを紹介します。
2019.01.31 マウスにおいてユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取が腸内細菌叢と炎症の調整によって肥満状態を改善したことが科学雑誌『Nutrients』に掲載されました。
はて?ユーグレナ?
最初に、ユーグレナについて説明します。
ユーグレナ(和名:ミドリムシ)は、ワカメや昆布、クロレラと同じ藻の一種で、動物と植物の両方の特徴を持っており、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸など59種類の栄養素をバランスよく含んでいます。なお、ユーグレナ特有の成分でβ-グルカンの一種であるパラミロンは、近年機能性についての研究が進み、食品や化粧品などのヘルスケア分野などでの活用が期待されています。
以下、ユーグレナ社のHPより研究概要です。()は筆者解説
(例えると前回の研究で普通の体型の人で有効だった。今回はさらに肥満の人でも同じかどうかの研究です。)
■研究内容と結果
①通常食を与えたマウス群(以下通常食群)
②高脂肪食を与えたマウス群(以下高脂肪食群)
③高脂肪食とパラミロン粉末を与えたマウス群(以下高脂肪食+パラミロン粉末群)④高脂肪食とユーグレナ粉末を与えたマウス群(以下高脂肪食+ユーグレナ粉末群)⑤高脂肪食とユーグレナ粉末と野菜粉末の混合物を与えたマウス群(以下高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末群)の5つに分け、2ヵ月間経口摂取させました。
結果、高脂肪食+パラミロン粉末群、高脂肪食+ユーグレナ粉末群および高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末群において、精巣周囲脂肪組織重量ならびに総白色脂肪組織重量が有意に減少しました。
さらに、高脂肪食+パラミロン粉末群と比較して、高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末群では有意に総白色脂肪組織重量が減少し、野菜粉末の同時摂取がパラミロン粉末摂取による効果を増強させることが確認されました。
肥満モデルマウスにおいて、高脂肪食+パラミロン粉末群、高脂肪食+ユーグレナ粉末群および高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末群において、高脂肪食群と比較して血清中の炎症性サイトカイン*4であるIL-6の有意な減少を確認しました。さらに、高脂肪食+ユーグレナ粉末群および高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末群では、高脂肪食+パラミロン摂取群と比較して、IL-6減少作用を有意に増強することを確認し、高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末摂取群においては、高脂肪食群と比較してIL-1bの有意な減少を確認しました(図3)。
(追記:IL6は代表的な炎症マーカーであり、コロナウイルスで重症化した患者さんにおいて疑われているサイトカインストームというメカニズムの主役となる物質です)
これにより、前回の共同研究において通常食飼育マウスで得られていた抗炎症作用(炎症性サイトカインであるIL-6およびIL-1bの有意な減少)を、今回の研究により肥満モデルマウスでも確認できたことになります。
さらに、前回の共同研究で、通常食飼育マウスのユーグレナ粉末の摂取およびユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取により、腸内細菌叢が改善することを報告しましたが、高脂肪食を与えた今回の試験においても、高脂肪食+ユーグレナ粉末+野菜粉末群の混合物を摂取したマウスにおいて、腸内細菌叢が産生する短鎖脂肪酸(プロピオン酸)の有意な増加(図4)と、有害菌の減少を確認しました。
(追記:日本人の多くは高脂肪食であり、普段と変わらない食生活でも効果があることが示唆された)
まとめ
ユーグレナ粉末と野菜粉末の同時摂取が、腸内細菌叢の改善と炎症性サイトカインの減少からみられる炎症の抑制を介して抗肥満作用に寄与したと考えられました。
注)この研究はマウスによるものであり、この研究から「人」に効果があるとまでは言えません。「示唆される」と理解してください。私は期待していますが。
*1前回の共同研究: 2018年10月12日付の武田コンシューマーヘルスケア株式会社及び株式会社ユーグレナの共同リリース https://ssl4.eir-parts.net/doc/2931/tdnet/1635229/00.pdf
*2 腸内細菌叢: ヒトや動物の腸内で一定のバランスを保ちながら共存している多種多様な腸内細菌の集まりのこと
*3抗炎症作用: 炎症を抑制する作用
*4血清中の炎症性サイトカイン: 生体内の様々な炎症症状を引き起こすサイトカイン。サイトカインとは生体内で免疫の伝達を担うたんぱく質のこと