脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

新型コロナに備える:タケダ緑の習慣 免疫編

【質問】    

脳梗塞など持病がある方は、コロナ騒動の中、もし自分も感染してしまったらと思い、不安で仕方ないと思います。あたなは免疫力を高めるにはどのようなことをしていますか?

      

【私の答え】  

規則正しい生活(睡眠 運動 食事)+ タケダ緑の習慣 

 

 

1.腸管粘液免疫系

口から入ったばい菌や食べ物は一つの管を通り肛門から排出される。人間は外界から栄養素を吸収する器官である「腸」が生体と外界とのインターフェイスとなっている。当然、腸は多くの「抗原」に絶えず暴露されており、とてもユニークなシステムがあることが近年わかってきた。

 栄養素を吸収しながら、微生物の侵入を排除し、食物の抗原などには免疫寛容を巧妙に操る腸管粘液免疫系が非常に重要な役割を果たしている。

 腸内細菌叢が肥満・癌・代謝疾患など多様な生体修飾機能を有していることが報告されているが1)-3)、中でも粘液免疫システムの制御機能が注目されている。主要な腸内細菌群の一種であるクロストリジウム目細菌群は免疫応答の抑制に重要な制御性T細胞(Treg細胞)の分化や増殖を促すことが報告されている。4)5)

 

 クロストリジウムは自己免疫系の神経難病である多発性硬化症の患者さんにおいて減少していることが世界で初めて国立精神神経センターから報告され、腸内細菌と自己免疫疾患の発症への関与が日本から世界に向けて発信されているHotな分野である。

 新型コロナウイルスに関しては、免疫の過剰な応答であるサイトカインストームなど重症化のメカニズムとして注目されており、免疫の制御は非常に大切な要素である。

 

 2.酪酸産生菌

マウスの実験で、腸内細菌叢にクロストリジウム目の細菌群を定着させたマウスに高繊維食または低繊維食を与えると、酢酸やプロピオン酸、酪酸などの短鎖脂肪酸や、ロイシンやイソロイシン、γ-アミノ酪酸といったアミノ酸の含量が高繊維食を与えたマウスで増加していた。

 これらの中でプロピオン酸にはわずかに、酪酸には著名なTreg細胞誘導作用があることをin vitro試験系およびマウス大腸粘膜において評価し、酪酸およびプロピオン酸は、未熟なT細胞に直接作用することでTreg細胞への分化を促進することを示した6)。一方、酪酸による未熟なT細胞への直接的な作用に加え酪酸樹状突起に作用することで間接的にTreg細胞への分化を促進する可能性も報告されている。7)

 

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 まとめると、クロストリジウム目細菌群などの酪酸産生菌は食物繊維代謝酪酸を産生する。大腸粘膜において酪酸制御性T細胞の分化を誘導し、制御性T細胞は大腸炎やアレルギーなどの免疫応答を抑制する。当然、コロナウイルスなどの感染症への自身の免疫力の発揮にも寄与する可能性がある。

  腸内細菌叢のバランスの乱れが、腸管関連疾患だけでなく全身性疾患につながることが続々と報告されており、腸内の免疫を整えることはコロナウイルスへの備えとして一助になると私は考えている。

 

3.酪酸産生菌を含む製剤

 実は、酪酸産生菌を含む製剤はすでに市販されている。 武田薬品工業のビオスリーがその1つであるが、菌を直接取っても多くは胃酸などで死滅してしまう。整腸作用などは認めており効果がないわけではないのだが、酪酸を増やしたいのであれば腸にいる腸内細菌を増やす方が生理的であり合理的であると思う。

 

 

つまり、腸内細菌のえさとなる食物繊維をたくさんとり、腸内細菌のバランスを整えることが最も大切である。よって、普段の食事に「緑の習慣」で野菜とユーグレナオリゴ糖など食物繊維を追加して摂ることを行っている。

  

 1) Ridaura,V.K.et al.:Science,341:12141214,2013

2) Yoshinoto,S. et al.:Nature,499:97-101,2013

3) Fukuda,S.&Ohno,H.:Semin.Immunopathol.,36:103-114,2014

4) Atarashi,K. et al.:Cell,139:485-498,2009 

5) Atarashi,K.et al: Nature,500:232-236,2013

6) Furusaw,Y. et al.: Infect. Immmun.,67:3504-3511,1999

7) Arpaia,N. et al.:Nature,504:451-455,2013