歩行練習を始めた時、麻痺側下肢は曲げる力は弱かったが、伸ばす力は少しあった。
手で何かにつかまりながら、脚を伸ばし、少し体重をのせた状態で身体を支える。
そもそも非麻痺側だけでも少しの間なら立っていられる。
まあ、言葉でいうと簡単だが、実際はバランスボールに乗っているくらい不安定。しかし、人間の身体は不思議でこのような状態でも見かけ上歩くことはできたりする。
その時、脚を出そうにも膝が出せないが、腰のあたりで脚全体を持ち上げて、何とか前に出すようになる。(図1)
図1
こういう歩くというより、かろうじて歩いているような状態から始まり、次第に下肢のパーツが動くようになってきた。いわゆる麻痺の回復の経過であるが、少しづつ歩いているようにみえるようになっていった。
しかし、最後まで(今でも)残った違和感が膝であった。
膝は不安定で歩くときに体重をのせようとするとぐらぐらする。体重がかかりそうになるところから、動きだし滑って行って、カクンと膝が最大限伸びた状態でとまる(図2)。
歩行分析で膝がぐらぐら不安定なことを動揺wobblesという。
これは立脚期に交互に起こる小さな膝関節の屈曲と伸展である。
この逸脱運動は小さな動きゆえ、訓練された目でしか確認できない。
ローディングレスポンスやミッドスタンス、ターミナルスタンスで起こる。
※ローディングレポンスでは足関節の過度の底屈が二次的に膝関節の過伸展を生じさせる(図2)
図2
※ミッドスタンスでは大腿四頭筋の過緊張が膝関節屈曲を妨害し、過伸展を生じさせる(図3)
図3
いろいろな原因があるらしいが、私の場合は理学療法士からは「膝は2関節筋だから、関節をまたぐ2つの筋がしっかり働かないとダメで、そこが弱いと思う」・・・と言われていた。足関節と膝関節双方の問題ということらしいが、詳しくは答えてはもらえないから、自信ないのかなぁと思っていた。
私見では、立脚後期の「TLA」がポイントだったようだ。
感覚的に言うと「股関節から麻痺側下肢が身体の後ろ側に伸びる(残す)角度のこと」である。足がしっかり後ろに残る。蹴る。これができなかった。
ちなみにこれを目的としたリハビリは行わなかった。正確にはよくわからず行えなかった。ただ、ひたすら散歩などで歩き続けた。
それでも数年間かけて、少しづつ下肢機能の改善が続いていき、次の課題として立脚後期の麻痺側の底屈モーメントがポイントになった。これは下腿三頭筋の筋力不足というと個人的にはわかりやすいと思っている。感覚的には足関節の問題である。(以下に続く)