脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

起立訓練は嚥下機能を改善するかもしれない

嚥下障害の患者さんに、嚥下訓練をするのは当たり前かもしれません。一方で、一見関係なさそうな起立訓練が嚥下障害を改善するかもしれないという論文を紹介します。リハビリテーションでは部分ではなく全体を診ることが大事ということだと思います。

 

目的:回復期でリハビリテーションを受けている嚥下障害のある脳卒中患者において、嚥下障害の状態対する全身運動の影響を解明すること。

 

方法:研究デザインは後ろ向きコホート研究。2016年から2018年の間に日本のリハビリテーション病院で脳卒中後の嚥下障害を対象とした。嚥下障害は、食物摂取レベルスケール(FILS)スコア<7として定義された。対象者は、従来のリハビリテーションに加えて、全身運動として椅子からの起立運動を繰り返した

 研究結果には、FILSスコアと退院時の嚥下障害の有無、​​FIM運動スコアおよび入院期間を用いた。多変量解析にて、潜在的な交絡因子を調整し、毎日の起立訓練の頻度が研究結果と独立して関連しているかどうかを解析した。

 

結果:637人の患者のうち、嚥下障害のある148人の脳卒中患者(平均年齢72.7歳、男性48.6%)を対象とした。起立訓練の頻度の中央値は36(12-65)でした。多変量解析では、起立訓練の頻度は、退院時のFILSスコア(β= 0.231、P = 0.015)、退院時の嚥下障害の有無(オッズ比:0.982、P = 0.035)、運動FIMと独立して関連していた。退院時(β= 0.205、P = 0.008)とその増加(β= 0.237、P = 0.013)、および入院期間(β= -0.042、P <0.001)。

 

結論:起立訓練は、嚥下障害のある脳卒中患者において、嚥下障害の状態、日常生活動作、入院期間短縮などの好ましい臨床転帰と関連していた。脳卒中後の嚥下障害のリハビリテーションには、従来のリハビリテーションプログラムに加えて全身運動を含める必要がある。

 

引用:Geriatr Gerontol Int 2020; 20:885-891