脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

医療者の現在地:コロナ風評被害の実態

医療従事者は大なり小なり社会や人の役に立っているという自負があったと思う。

時々モンスターペイシェントと出会ったりしてもそれはごく一部の変わった人々だと思う程度であった。

しかし、新型コロナウイルス感染症によりその自負が根幹から揺さぶられている。ごくありふれた普通の人々から差別的な扱いを受け、それが家族にまで及ぶとき、今ここで働く意味を考えさせられる人は多い。

 

日本医師会より新型コロナウイルス感染症に関する風評被害の緊急調査結果が報告されました。全国から698件の報告があったそうです。

 

方法 調査概要

1.名称:新型コロナウイルス感染症に関する風評被害の緊急調査
2.目的:令和2年度第2回都道府県医師会長会議(2020年11月17日開催)で新型コロナウイルス感染症に関する医療従事者などへの風評被害について問題提起されたことを受けて、日本医師会として医療従事者などに対する風評被害の実態を把握し、その結果を基に、医療の最前線で奮闘している医療従事者の置かれている状況について、国民に理解を求める。
3.対象:2020年10月1日~12月25日までに各地域で起こった風評被害
4.内容:風評被害の対象者(医療機関、医師、医師以外の医療従事者、医療従事者の家族、その他)、具体的事例、対応策
5.方法:都道府県医師会の協力のもと、各地域の被害状況について調査し、その結果を、2021年1月15日を期限としてメールで回答いただいた。
6.回答:47都道府県医師会すべてより回答(総回答数698件)

 

 

結果  総回答数698件

 

【被害を受けた対象】

「医師以外の医療従事者」277件(40%)

医療機関」268件(38%)

「医師または医療従事者の家族」112件(16%)

「医師」21件(3%)

「その他」20件(3%)

 

※「医師以外の医療従事者」に対する風評被害は、主に看護師が多かった。

 

【内容】

《具体的な事例1:医師
・濃厚接触者ではなく、新型コロナ患者の対応をしていないにもかかわらず、自治体より乳児健診前の2週間は勤務しないように要望された。
・検死に赴いたにもかかわらず、当該関係者から、あたかも自分が新型コロナに罹患しているかのような対応を受けた。
防護服着用で診察などの対応をしていると、その格好を揶揄するような指摘をされた。
・このような時だから、医師は遠出をするべきではないとを言われた。
・医師が近隣に引っ越してくると知った住人から、「窓も開けられなくなる」「引っ越しを延期してもらえないか」といったクレームが出た。

 

《具体的な事例2:医師以外の医療従事者
・新型コロナを診ている医療機関か否かにかかわらず、医療機関に勤務しているだけで、「近寄るな」「(集まりや習い事に)来ないで欲しい」「(美容院などの)予約を受けられない、しばらく利用を控えて欲しい」「一緒にエレベーターに乗るのが怖い」などの扱いや暴言を受けた。
保育園などに子供の預かりを拒否され、新型コロナの対応に当たっていないことを説明しても聞き入れられず、仕事を休むことを強いられた。
・勤務先医療機関に初めて新型コロナ患者が入院した際、ほかの通院患者から「自分の家族は大丈夫なのか。何かあったら責任を取ってもらう」と言われた。
・病院職員に陽性者が出たため、PCR検査を受けた。陰性だったが、自宅待機をしていたところ、近隣住民から電話が殺到、嫌がらせのようなものもあった。
・買い物に行くと、知人である従業員から「何しに来たの?早く帰って」と言われた。
・感染拡大地域から通勤していることで、同僚から避けられ、車が県外ナンバーであることで肩身の狭い思いをすることがあった。

 

《具体的な事例3:医療機関
・「診療・検査医療機関」であることが県ホームページに掲載されると、受診患者数が大きく減少した。
・近隣医療機関で新型コロナ患者が出たことを受け、「(当院でも)患者が出た」「スタッフが感染している」など、SNSに誤った情報を書き込まれた。
・病院敷地内にユニットハウスを建て、発熱外来として利用していると、近隣住民から「窓を開けるな」など、クレームがあった。
医療機関に勤務していることを職員の家族らが心配し、職員の退職の原因となった。
・「お前らのせいで学校が再開できなくなった。どうしてくれるんだ」「感染拡大の責任を取れ」「職員を外出させるな」「職員の住んでいる場所を教えろ」など、恫喝めいた問い合わせがあった。

 

《具体的な事例4:医療従事者の家族
・子供が学校に来てもいいのか?お母さんは看護師だろ?と言われるだけでなく、本人が新型コロナに感染しているかのような扱いを受けた。
・医療従事者の子供というだけで、別室保育や別室授業などの対応をされたほか、登園や登校をしばらく控えるように要望された
・子供の地域活動(友達付き合い、習い事、クラブ活動など)が、直接的・間接的に拒否され、子供が精神的に不安定となった。
・家族が新型コロナを診療している医療機関に勤務しているため、親のデイサービス利用が断られたり、取引先から「取引を止める」と言われたり、会社内で「お前の家族はコロナじゃないのか」「お前も感染してるんじゃないのか」と言われた

 

 このように、新型コロナウイルス感染症に対する過剰な心配と思われる事例が多く見られた。中には、家族や親戚から交流を避けられるといった事例も散見され、医療従事者が精神的にも大きなダメージを受けていることが心配される。

 

 

結語

全国規模で風評被害が発生していることが明らかとなった。

中には、医療従事者に対する“いわれなき差別”とも言える事例が多く見られた

 

 

「差別はいけない」とみんないうけれど。

「差別はいけない」とみんないうけれど。

  • 作者:綿野 恵太
  • 発売日: 2019/07/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)