脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

新型コロナは健康・若年・無症候でも脳卒中リスク上昇

シンガポールのTian M. Tu氏らは、脳梗塞新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に見られる神経学的合併症で、無症候性COVID-19患者の回復期においてもリスクは高いことを発表した。引用:JAMA Netw Open(2021; 4: e217498)

 

方法

 解析対象は、2020年5月21日~10月14日にシンガポールの公立病院で脳梗塞の治療を受けた男性患者18例(年齢中央値41歳、範囲35~50歳)。いずれも職場の寮に居住するインドおよびバングラデシュの労働者だった。

 全例が新型コロナウイルスSARS-CoV-2)血清抗体検査の陽性判定に基づき、COVID-19と確定診断された。AISによる入院中の逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)検査は全例が陰性だった。

 電子医療記録から抽出した臨床経過、画像診断、臨床検査データを解析した結果、SARS-CoV-2陽性判定から脳梗塞発症までの期間中央値は54.5日(範囲0~130日)だった。

結果

 米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアの中央値は5(範囲1~25)だった。10例(56%)で脳主幹動脈閉塞が検出され、うち7例(39%)で脳前方循環主幹動脈閉塞が検出された。3例(17%)が心原性と考えられたが、13例(72%)は病因を特定できなかった

 また、脳梗塞の危険因子を保有しない患者が12例(67%)に上った。一方、D-ダイマー上昇が認められた患者は3例(17%)にすぎなかった。

 

 対象集団における10万人当たりの脳梗塞発症率は82.6人・年と推定され、シンガポール保健省の全国データを基に年齢、性、人種/民族を一致させた一般集団における38.2人・年と比べて有意に高かった(発症率比2.16、95%CI 1.36~3.48、P<0.001)。年間発症率は全国データの2.16倍

 

結論

・50歳以下の無症候性COVID-19男性患者は、回復期においても脳梗塞を発症するリスクが高いことが示唆された。特に若年成人や危険因子がない患者において、COVID-19の後遺症として注意すべきである

・COVID-19回復期ではRT-PCR検査が陰性を示すことが予想されるため、SARS-CoV-2の血清抗体検査を行うべきである