脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

新・日本の階級社会

階級社会というテーマの本であるが、データ分析に基づいた日本社会の国民生活の分析を行った本である。格差について私はあまり知識がなかった。一方で、著者の主観的な主張を一方的に聞くことはあまり好きではない。データに基づいた等身大の日本の現状分析を行っている本書は、ある程度正確に国民生活を知ることができる本である。分類手段としての結果を考察し、階級社会と表現している。

 

1.一億総中流は錯覚である

 

内閣府による国民生活に関する世論調査によると、日本人の中流意識は1975年から2017年にかけて「中の中」の割合は減少しているもの割合全体に大きな変化はない。アンケートの選択肢が「中」が多くなる問題点もあるが、多くの国民が自分を中流であると認識していることは事実ではないかと思う。

日本人の中流意識

 

一方で、国民生活は大きく変化してきており、データを抽出すると格差を実感する人々が増えてきている。その間の産業構造の変化の中で、著者によれば日本には5つの階級が存在する。そこには、古くから言及される資本家VS労働者という階級ではなく、労働者が「新中間階級、労働者階級」に分かれ、その両方を兼ねる位置づけとなる「旧中間階級」が分かれている。

 

現代社会の階級構造

 

1.資本家階級(経営者・役員:254万人、就業人口の4.1%。平均世帯年収男性1070万円、女性1039万円。平均資産総額4863万円(金融資産2312万円)。

 

 私の意見:いわゆる企業経営者・オーナー一族

   会社の資産と個人資産の境界はあいまいで、年収はあまりあてにならない


2.新中間階級(被雇用の管理職・専門職・上級事務職:1285万人。就業人口の20.6%。平均世帯年収男性804万円、女性788万円。平均資産2353万円(持ち家がない人は935万円)。

 

 私のイメージ:大企業や官公庁の管理職や医者・弁護士・教師などの専門職


3.正規労働者階級(被雇用の単純事務職・販売職・サービス職・その他マニュアル労働者):2192万人、就業人口の35.1%。平均世帯年収男性569万円、女性687万円。平均資産総額1428万円(持ち家がない人は406万円)。貧困率2.6%。

 私のイメージ:いわゆる中小企業で働く正社員


4.旧中間階級:806万人、就業人口の12.9%。平均世帯年収587万円。平均資産総額2917万円。貧困率17.2%。

 私の意見:個人事業主や零細企業をファミリービジネスとして行う経営者一族

      玉石混交で個人資産と会社資産の境界はあいまいで年収はあてにならない

    貧困率は高いが、経費などの活用手段があるため、あてにならないと思う。        

 

5.アンダークラス非正規労働者:929万人、就業人口の14.9%。平均世帯年収343万円。平均資産総額1119万円(持ち家がない人は315万円)。貧困率38.7%

 

 私の意見:いわゆる非正規労働者と母子家庭

      本書の最大の主張である近年生まれた新しい階級

 

2.戦後日本における階級構造の変化

 

戦後日本における階級構造の変化

グラフを見ると戦後日本の社会のかたちが、実にダイナミックに変化してきたことがわかる。戦後まもない1950年には、旧中間階級(農民を含む)が日本の有業者の6割近くを占めていた。労働者階級はその半分にも満たない28%で、新中間階級も11%にすぎず日本は、一つの巨大な農業国だった。その後、経済復興が進み、高度成長と共に農民層は激減していった。1960年代に自営業者を含めた旧中間階級と労働者階級の数が逆転し、1990年には新中間階級も旧中間階級を上回った。こうして日本の階級構造は、発達した資本主義社会としての特徴を示すようになった。

3.アンダークラスの登場

 

被雇用者と年収

アンダークラスは、もともと英米圏での研究から生まれた用語で、主に大都市部で生活する少数民族貧困層をさすことが多かった。しかし先進国の多くで経済格差が拡大する中、今日ではより一般的な存在となった。

 本著ではアンダークラスパート主婦を除く非正規労働者と定義した。人数は929万人で、就業人口の14.9%を占めて、激増を続けている。女性比率は43.3%で女性の割合が最も高い階級である。

 職種は男性ではマニュアル職が57.9%で、残りがサービスと販売が多い。女性は事務、販売、サービス、マニュアルが4分の1ずつである。

 際立った特徴は、男性で有配偶者が少なく、女性で離死別者が多いことである。未婚のままアンダークラスであり続けてきた女性がかなりの数いる一方で、既婚女性が夫との離死別を経てアンダークラス流入してくる様子がうかがえる。

  アンダークラスには最終学校を中退した人が多い。その比率は12.0%で他の階級平均の2.2倍である。学校中退が、安定した職の確保に大きくマイナスに働いていることがうかがえる。学校でいじめを受けた経験を持つ人の比率が高く31.9%に上る。学校を休みがちになったことがある人の比率も9.9%と高く、いじめや不登校の経験はアンダークラス所属と結びついている。

5つの階級と生い立ち

4.階級は固定化しているか(男性)

 

格差社会をめぐる大きな論点の一つが、格差の固定化である。つまり、豊かな両親のもとで生まれた人々は自分も豊かになり、貧しい親のもとで生まれた人々は自分も貧しくなるということである。このような固定化傾向があることは、古くからの研究で証明されているが、問題はその傾向が強まっているかどうかである。

 

以下は、直感的にわかりやすい世襲率と変化をより正確に反映すると考えられるオッズ比のグラフである。

 

非移動率と世襲率の推移

非移動率は1955年の0.604から1965年、1985年0.381と下がっている。その最大の原因は旧中間階級の大部分を占めていた農民層の子どもが農民層以外に流出したことである。1995年になると非移動率はわずかに上昇しているが、明らかに固定化が進んでいると言えるほどではない。

 世襲率は階級によって違う。はっきりしているのは旧中間階級で、1955年には0.663に上っていた世襲率が急速に低下した。理由は非移動率で記載した通りである。これに対し、資本家階級は1965年から1975年にかけてた階級からの参入が盛んになり世襲率が低下したが、その後は上昇に転じている。

 一方、オッズ比でみると旧中間階級は世襲率ほどの低下はなくほぼ横ばいである。これは、世襲率の低下は主に旧中間階級全体が低下したのであり、「旧中間階級出身者は、それ以外の出身者に比べて相対的に旧中間階級になりやすい」という傾向自体は変化していないことを示している。これに対し資本家階級と労働者階級は世襲率と類似していて、1975,1985年ころまではオッズ比は低下し、継承性は弱まったが、その後は継承性を強めている。特に資本家階級は1975年に3.48だったオッズ比が2015年には15.41と急激に上昇しており、著しく閉鎖性を強めてきたと言っていい。

 階級構造の頂点に立つ資本家階級と底辺に位置する労働者階級がともに世代的な継承性を強めたのだから格差の固定化が進んだと結論しても間違いではないだろう。

 

※60年間のデータが得られるのは男性だけのため上記の分析は男性について当てはまるものである。

 

5.階級は固定しているか(女性)

 

女性の階級意識を調べる場合、本人は専業主婦だったり、パート主婦だったりするので、本人の階級所属がなかったり、あったとしても生活水準と意識は、当然ながら夫の階級所属から強い影響を受ける。よって、女性の世代間移動を考える際には父親と夫の階級所属の比較も必要となる。

 

女性・父親と本人の比較

女性の父親と女性本人の比較では、非移動率は0.35前後で安定している。男性のように近年になって非移動率が上昇する傾向はみられない。オッズ比でみても同様であり、女性の階級所属は父親の階級とはあまり関係がないといえる。

女性・父親と夫の関係

父親と夫の階級所属の関係について、オッズ比はやや変化が大きく、特に資本家階級は2015年に急落してほぼ1.0となった。これは資本家階級出身とそれ以外の女性で、資本家階級の夫を持つ確率が全く同じになったということを意味する。

 全階級でオッズ比は低下傾向であり、女性がどの階級の夫を持つかということは父親の階級と弱い関係しかないといってよい。

 

6.女たちの階級社会

 

男性の場合、その生活水準や意識は、ほぼ本人の階級所属によって決定されると考えてよい。これに対して女性は、自分の階級所属と共に、あるいはそれ以上に夫の階級所属の影響を受ける。したがって、女性の格差を考えるためには、両者に同時に注目しなければならない。

 

2015年SSM調査

妻が夫より収入が多い  6.0%

妻と夫の収入が同じ   7.8%

妻が夫より収入が少ない 86.2%

妻が夫の収入の半分以下 68.8%

 

以上より世帯収入の大部分は夫の収入により決定されている。よって、本人の階級所属と夫の階級所属を組み合わせて分類を行った。

 

女性の階級所属と夫の階級所属

各階級の定義に関わる調整を行い、女性を30のグループに分類を行った。

人数が多いのは

 本人がパート主婦で夫が労働者階級のケースで10.7%

 本人が無職で夫が労働者階級が10.0%

 夫のいないアンダークラスが8.3%

 配偶者のいない正規労働者7.9%

 無職で夫が新中間階級7.8%     などが続く。

 

さらに細かい分析が本書では行われています。

興味がある方は購入するか図書館などで借りて読んでみてください。

17グループの女性たちの基本属性

 

※ 本書を読んでの感想

 日本の重要かつ緊急性のある社会課題は少子化である。そして、少子化対策として保育園の整備など子育てしやすい環境整備が叫ばれているが、「未婚」の問題の方がインパクトが大きいように思う。特に、男性のアンダークラスは未婚率が高く、正社員並みの待遇が得られるような対策が最も費用対効果が高いのではないか。

 女性の階級について、生まれの階級と夫の階級はほとんど関係ないということで、格差とは正反対の結果であり、良い傾向になっていると思う。一方で、アンダークラスは女性比率が高く、未婚・賃金格差など女性にとっての社会課題を認識することができる。

 

認知機能向上に効果的な有酸素運動:ゴルフ、ノルディックウォーキング、ウォーキングの比較

はじめに

 有酸素運動により、運動の強度や実施時間、種類に関係なく認知機能が向上する可能性が過去の研究で示唆されています。年齢を重ねるごとに脳の機能は低下していくなかで、記憶や思考力を保つためにするべきことは何なのか。散歩や速めのペースの歩行などがよいことは広く認識されていますが意外とその範囲は広いのかもしれません。その質問に答える研究を報告します。

 

方法

 5日間にわたるランダム化クロスオーバー試験により、認知的要求度の高い3種類の高齢者に適した有酸素運動18ホールのゴルフ、6kmのノルディックウォーキング、6kmのウォーキング)が認知機能に及ぼす即時的な効果を検討した。

 対象者であるゴルフを趣味とする健康な高齢者25人(平均年齢69±4歳、男性16人)には、3種類の運動の全てを、各運動の間に1日のウォッシュアウト期間を挟みながら、実際の生活環境の中で自分のペースで行ってもらった。運動の際には、フィットネスモニターにより距離、時間、ペース、エネルギー消費量、歩数を測定し、ECG(心電図)センサーにより心拍数も測定した。

 認知機能については、高齢者の視空間認知機能の評価に広く用いられているトレイル・メイキング・テスト(Trail Making Test;TMT)のパートA(TMT-A、注意力や処理速度を評価する)とパートB(TMT-B、作業の切り替え能力や、作業記憶と認知的柔軟性を要する実行機能および高次の認知機能を評価する)により評価を行い、それぞれのテストを完了するのに要した時間を計測した。また、対象者から運動の前後で血液を採取し、運動による効果を反映する物質と見なされているエクサカイン(運動応答性生理活性物質)として、BDNF(脳由来神経栄養因子)とCTSB(カテプシンB)の測定を行った。

 

結果
 3種類の有酸素運動の全てで、運動前と比べて運動後にはTMT-Aを完了するのに要した時間が有意に短縮することが明らかになった(ゴルフ:−4.43±1.5秒、ノルディックウォーキング:−4.63±1.6秒、ウォーキング:−6.75±2.26秒)。

 ノルディックウォーキングとウォーキングでは、TMT-Bを完了するのに要した時間についても有意に短縮していた(同順で、−9.62±7.2秒、−7.55±3.2秒)。TMT-AおよびTMT-B完了に要した時間の合計は、全ての運動で、運動前と比べて運動後に有意な短縮が認められた(ゴルフ:−9.23±4.7秒、ノルディックウォーキング:−14.26±7.4秒、ウォーキング:−14.28±8.20秒)。ただし、TMT-B完了に要した時間からTMT-A完了に要した時間を差し引いた値に有意な短縮が認められたのはノルディックウォーキングのみだった(−4.97±7.26秒)。一方で、BDNFとCTSBの値に運動の即時的な影響は認められなかった。

 

考察
 すべての有酸素運動で認知機能の改善があったことから有酸素運動が認知機能の維持向上に有効であることが示されました。ノルディックウォーキングはなじみのない方もいるかもしれませんが、専用ポールを使用して上下肢を十分に動かし、通常のウォーキングに比べて、下半身だけでなく上半身(腕や背中)の筋肉も使用する全身運動で、身体にある90%以上の筋肉を意識して使うことができると言われています。個人の好みも考慮して取り組みやすい運動を選ぶのがよいのかもしれません。

 

引用論文: Kettinen J, et al. BMJ Open Sport Exerc Med. 2023;9:e001629.

 

ALSはMg欠乏に起因するタンパク質合成の障害が原因という私の仮説

ALSについての考察は過去に行った。

その後、臨床医との議論を経て考えを更新した。

 

naorureha.hatenablog.com

 

表題の仮説は次の問いへの考察から。

 

その1 なぜ運動神経だけが特異的に障害されるのか

 

その2 ALS初期に血液検査でCPKが上昇するのはなぜか

 

その3 ALSでは脳脊髄液検査において軽度タンパク上昇が起こる例があるのはなぜか

 

その4 反復筋電図において、wanningを認める(神経筋接合部の障害)症例がある

    それはなぜか

 

 

1.なぜ運動神経だけが特異的に障害されるのか

 

ALSは運動ニューロンの病気である。他にも運動ニューロンの病気はいくつかあるが、ポリオなど感染症やギランバレー症候群など免疫学的な機序によるものが主である。ALSは免疫療法は効かないとされ、発症メカニズムは分かっていない。

 

前述したその1-4の謎が、病気の原因への手がかりであるように思う。過去の記事で「恒常性の破綻」という内因的な視座でALSの原因を探った。その視座で考えてみるが、解剖学的、生理学的に考えて脊髄や末梢神経の運動ニューロンだけが障害される機序が考えつかなかった。唯一、脊髄運動神経の亜鉛トランスポーターの異常に起因する亜鉛恒常性破綻という機序が考えられたが、既報告からはそれが一次的な変化で起こるとは考えにくかった。この異常は別の変化の二次的な影響のようである。

 

引用:ヒト ALS における亜鉛トランスポーターに起因する 小胞体ストレスと治療法開発 M. Kaneko, T. Noguchi, S. Ikegami, T. Sakurai, A. Kakita, Y. Toyoshima, T. Kambe, M. Yamada, M. Inden, H. Hara, H. Takahashi,and I. Hozumi, Zinc transporters (ZnT3 and ZnT6) are diminished in the spinal cords of the patients with sporadic amyotrophic lateral sclerosis (ALS) . JNR 2014.

 

そこで、ALSの初期病巣は神経ではなく「筋肉」であり、筋肉につながる「運動ニューロン」は二次的変化ではないかと考えてみた。すると、上記の問いに対する説明がしやすくなるように思われた。その際は、神経伝達物質やニューロトロフィンなど神経と筋の相互作用がカギとなり、生理学的事実に基づく説明は困難で、断定的なことは言えない。仮説となるが、一言で言うなら「筋肉におけるタンパク合成異常」という表現になる。

 

下の図でいうと、左の「手足口の筋肉」から右の「神経」への病態進行があるのではないかということを仮説としてお話した。

田辺三菱製薬ホームページより引用

2.ALS初期に血液検査でCPKが上昇するのはなぜか

 

ALSガイドライン2023では、CPKはALS患者では正常範囲もしくは軽度上昇にとどまることが多く、高値の場合には筋疾患の可能性を考慮することが必要であると記載されている。

 この記載では触れていないが、ギランバレー症候群などの運動ニューロン疾患においてCPKが上昇することは通常なく、CPKは筋疾患のマーカーである。なぜALSで軽度上昇があるのかは説明されていない。

 CPKは筋が壊れた時に血中にでる。つまり何らかの「筋肉の異常が存在する」ということである。これは神経障害のみから説明するのは困難であると思う。だとしたら、筋にも何らかの異常が起こるような病態を考慮して病因を考えなければならない。

 

※線維束収縮(fasciculation)が原因では?と考えるかもしれないが、fasciculationの量とCPKは相関しないようである。

 

3.ALSでは脳脊髄液検査において軽度タンパク上昇が起こる例があるのはなぜか

 

ALSガイドライン2023では、脳脊髄液総蛋白は一部の例で軽度の上昇を認めると記載されている。その理由については説明していない。

 

一般的に考えるとタンパク上昇ということは、脳脊髄液中で免疫反応が起きていると考えることができる。つまり、ALSという病態において一次的もしくは二次的に何らかの「免疫的な機序が働いている」ということである。これは病態や治療、ひいては病因を考えるうえで、現在の変性疾患という視野を広げる必要があるということを示唆していると思う。

 

 

4.反復筋電図において、wanningを認める(神経筋接合部の障害)症例があるそれはなぜか

 

これはガイドライン2023にも記載はないが、臨床的にはしばしば認められる。当初、重症筋無力症などの他疾患の合併と考えられたが、その後ALSの病態に関連した所見と理解されている(議論の余地あり?)。いずれにしろこの所見が意味するところは「神経筋接合部」の異常が起こっているということである。

 

1-4をまとめると、運動神経が単独で障害され、神経筋接合部、筋にも初期から異常が存在する。また、脳脊髄液(脊髄)では免疫的な応答が起きていることがある。これは神経障害単独では説明は難しく、これらを包括的に説明する仮説は神経細胞のみならず多臓器にて細胞内の蛋白質の合成異常により異常蛋白が作られている。その異常蛋白に対して自己免疫応答が起こっている」である。

 

ALSガイドライン2023では病態・機序について

●遺伝的要因と非遺伝的要因が存在するが,両者にはグルタミン酸による神経毒性,蛋白質分解不全や RNA 代謝異常,小胞体ストレス,酸化ストレス,神経炎症など多くの共通病態が想定されている.
●家族性 ALS では原因遺伝子の機能低下ないしは変異蛋白質の毒性獲得,あるいはその両者による神経変性が想定され,孤発性 ALS では異常封入体を構成する TDP-43 が病原蛋白質と想定されている.

と記載している。

 

これらは運動神経局所の分子機構の異常を説明をしているが、結果として起こることは異常蛋白の生成である。そして、どれか1つが起こるとALSを発症するわけではなく、それぞれが複合的に関連しあって発症に至ると考えられている。

 

 「正常な生体システムの中で、運動神経に異常蛋白が発生」という発想であるが、「生体システム全体の異常によって運動神経などに異常蛋白の発生」と考えられないだろうか。

 

それが表題の「Mg欠乏→恒常性システムの異常→異常蛋白の発生」という考え方である。生体における基本的な生命維持にかかわる機構であるミネラル(Mg)欠乏が及ぼす結果は生体システムの異常という視座でとらえなおすことが必要ではないかと考えている。

脳卒中後の体調管理

脳卒中を患って知ることの一つは、自信を失うこと。特に身体、健康については一切を失います。

 

体力に自信はありますか?

風邪をひかない自信はありますか?

 

基本的にYESと答えてきた私が、今はYESと言えない。

コロナは怖いし、インフルエンザも怖い。

 

そんな脳梗塞患者の私の体調管理を紹介します。

 

今回は、エビデンスを示すことはできません。が、「3000年におよぶ中国・日本の歴史の中で人体に試されて残ってきた結晶が漢方薬」と思っています。いわば、人体実験の積み重ねの英知なわけで、医学的な解明は少しづつすすんでいます。エビデンスよりはヒトとしてご先祖様を信じています。

 

漢方薬の基本的な処方の考え方に「証」というものがあり、体力がある人、体力のない人で治療が変わります。ですが難しく考える必要はなく、脳卒中後の方はすべからく「証は陰」です。脳に障害があり、身体などバランスが崩れていて、体力があるはずがないでしょう。

 

その上で、「気血水」という生命のバランスに応じた漢方薬が選ばれますが、脳卒中後の患者は気血水すべてが弱まった状態と理解しています。

 

ここでは気血水それぞれについて詳しくは触れません。治療者によってかなり幅が出ることが予想されます。

 

それでも大丈夫です。滋養強壮目的であれば、漢方薬で補剤というグループで滋養強壮の王様といわれる補中益気湯でよいのです。

 

私の場合は1日1回程度服用しています。

 

 

以下、西洋医学的に解明されている補中益気湯の効能を記載しておきます。

 

  • 病後の気力低下、全身倦怠感に対して有効
  • ナチュラルキラー(NK)細胞などの細胞性免疫機能の活性化、栄養状態の改善作用を介して生体防護能を向上させる
  • 臨床では術後やがん患者を中心に頻用されている
  • 抗ウイルス作用(インフルエンザなど)、抗菌作用(MRSAなど)が報告されている

 

 

基本的な体をつくる習慣は 「食事、運動、睡眠」です。

リハビリでもよく言われていますよね。

 

では栄養は バランスよく必要な栄養 をとれていますか。

正直、配偶者さままかせ、もしくは「・・・」という方が多いのではないでしょうか。

バランスの良い食事は実はとても大変です。

 

 

上の表はアプリで記録した私の1日の食事ですが、マグネシウムや食物繊維は毎回不足です。ビタミンについては リポビタンD のような栄養ドリンクを飲まないと不足となることもあります。

 

3大栄養素である、タンパク質、脂質が少なく、炭水化物(糖質)が多い。

けれど、これでもかなり食事には気を使っています。

それでも、この結果はショックでした。

 

そこで医師と相談した結果が、医薬品の経腸栄養剤「イノラス」でした。

糖質を抑えて、タンパク質、脂質を補充できます。ミネラルやビタミンは十分に入っています。食事+イノラスで栄養ドリンクは不要になりました。

 

医薬品は医師の処方が必要ですが、医療保険が適応になり1-3割負担となります。

栄養で悩まれている方は主治医に相談してみてはいかがでしょうか。

 

大塚製薬:医薬品栄養剤 イノラス



脳卒中後の疲労 ~復職の課題

私は退院後しばらくあまり動かずにダラダラしていた。

家族からは動きなさい、リハビリだよと言われていた気がする。

少し動くと疲れるのが、身体が動かしずらくなったからなのか、神経疲労なのかわからなかった。ただ、リハビリスタッフから「神経疲労」という言葉を聞いていたことは救いだったと思う。

 

脳卒中後の疲労が仕事や日常生活へ及ぼす影響を調べた論文を紹介します。

復職を目指す患者なら「疲労」との付き合い方を知ることは必須だと思います。


引用:Annals of medicine. 2023;55(2);2269961. doi: 10.1080/07853890.2023.2269961.

 

はじめに

脳卒中後の患者の生活は、仕事を含む日常活動という包括的な領域であり、脳卒中後の疲労によって悪影響を受ける可能性がある。本研究では、脳卒中後の疲労の経時的な変化、および仕事復帰や日常生活活動への影響について検討した。また、脳卒中後の疲労脳卒中後1年間の日常生活活動の機能に予測因子となり得るかどうかも調査した。

 

方法

本研究は、2017年~2018年にスウェーデン脳卒中登録(Riksstroke)に登録された2850人の就業年齢(18~63歳)の患者を対象とした前向きなコホート研究である。脳卒中後3ヶ月と12ヶ月に疲労と日常活動を分析した。

 

結果

対象者の平均年齢は54歳で、男性が65%、女性が35%であった。

3ヶ月時点で約90%の患者が基本的なADLで自立していた。

脳卒中後3ヶ月で43%が疲労を認め、12ヶ月では48%に増加した。

 

脳卒中後1年間での複雑な活動は、疲労と有意に関連していた。疲労を感じていないことは、日常生活活動の機能に対する予測因子となり得ることが示され、仕事復帰(OR = 3.7)や脳卒中前の生活や日常活動(OR = 5.7)への回復の可能性が高くなった。

 

結論

脳卒中後の疲労は、一般的で持続的な障害であり、復職などの複雑な活動に否定的な影響を与える。退院後も長期的に対処される必要がある。

 

 

 

低Ca、低Mgの土壌の地域でALSが多発していた機序の考察

低Ca、低Mgの土壌の地域でALSが多発していた機序の考察をする。

背景の詳細は以下の記事を参照。

 

naorureha.hatenablog.com

 

ALSガイドライン2023 に記載されているALSの原因・病態は

●遺伝的要因と非遺伝的要因が存在するが,両者にはグルタミン酸による神経毒性,蛋白質分解不全や RNA 代謝異常,小胞体ストレス,酸化ストレス,神経炎症など多くの共通病態が想定されている.
●家族性 ALS では原因遺伝子の機能低下ないしは変異蛋白質の毒性獲得,あるいはその両者による神経変性が想定され,孤発性 ALS では異常封入体を構成する TDP-43 が病原蛋白質と想定されている.

となっている。基本的には決定的な一つの原因があるわけではなく、炎症を除けばもともと正常に働いていた人体におけるシステムの複数個所での異常の蓄積が運動ニューロン死を起こすと推測されている。

 

私は、これらの異常の上流の原因として、ミネラルの欠乏を考えている。

つまり、ミネラルの欠乏より人体の恒常性が破綻したと表現できる。

 

 

以下、わかりやすいように大雑把に骨格だけ取り上げて記載した。

 

人類はホモ・サピエンスから進化したさまざまな遺伝子と生理的性質をそのまま保持している。遺伝子による人類の設計図は、近年始まったばかりの農耕や文明生活より動物と共に森林などで狩猟採集をしていたずっと前の生活とほぼ同じと考えられる。

 

1.水の循環

 人類の生命の保持に最も重要なものは「水」である。人間の身体のほとんどは水でできている。成長とともに割合は変わるが、成人の60-65%は水である。海から陸に上がった人類の祖先にとって、貴重な水を保持するシステムが最優先で働いていることは理解しやすいと思う。本筋ではないため細かい生理的なメカニズムは割愛する。

  

大塚製薬ホームページより引用

 

<身体と水の流れ>

口から水を摂取→腸で吸収→体の細胞で消費→尿・大便として排泄

 

まずはイメージを共有したい。人間の身体は水を自分で作れない。

外から口を通して取り入れたものが、身体で消費されて、残りが体外に出ていく。

常にこれが保たれており、生きていくためには、水のin-outのバランスが取れていることが必須である。

 

これが止まると数日で死んでしまう。繰り返しになるが、この水に関わるシステムは最優先で動いている。

 

水が不足する体内のその他のシステムも機能しない。老廃物が体内に溜まっていても、その排泄は水の制約を受ける。つまり、腎臓や便から不要なものを排出するとしても水分を必ず必要とするのである。

 

2.エネルギーの循環

 人が生きていくためには、水だけでは足りない。細胞や臓器が活動するためのエネルギーが必要である。一般的にエネルギーのことをカロリーで表現しており、カロリーは車に例えるとガソリンにあたる。人はガソリンそのものを身体外から給油するのではなく、材料を仕入れて体内で作る。その材料は、炭水化物、タンパク質、脂質である。

 

<身体とエネルギーの流れ>

口から摂取→腸で吸収→体の細胞で消費→尿・大便として排泄

 

https://cocokara-next.com/fitness/diet-basics-meal-fft/

 

もう一度イメージを共有したい。人間の身体はエネルギーを自分で作れない。

外から口を通して取り入れたものが、身体で消費されて、残りが体外に出ていく。

生きていくためには、エネルギーのin-outのバランスが取れていることが必要である。

 

この時間軸は水よりは長い。人は2週間くらい食べなくでも水だけで生きれると聞いたことがあるだろう。

 

かつてヒトが狩猟採集生活だった頃、数日食べられないことは頻回にあった。このような時、つまり、inが止まった場合、身体のエネルギーはどこから調達するのだろうか。答えは、人体の「筋肉や脂肪」からエネルギーを取り出すである。これはよく知られている事実であり、これらの組織にはもともとエネルギーの貯蔵庫としての役割がある。

 

 

3.無機質(ミネラル)の循環

多くの人が誤解しているが、エネルギー(カロリー)と栄養はイコールではない。かつての狩猟採集時代ではカロリー=栄養でも間違いではなかった。木の実や動物・魚などにはカロリーも栄養もバランスよく含まれていた。しかし、加工食品があふれるようになり、スナック菓子やインスタント食品にはカロリーはあっても栄養はわずかしかない。そういう食べ物が増えた。

 

大塚製薬ホームページより引用


 

栄養とはタンパク質、脂質、糖質(炭水化物)、ビタミン、ミネラルを含む、

人が生きていくうえで欠かせない身体を作り、活かすものである。

 

 車の例えだとガソリンに加えてエンジンをかける鍵が必要である。その鍵は無機質とビタミンである。

 

無機質とは、生物の性質を有さない物質で、一般的には炭素・水素・窒素・酸素以外の元素で構成される。ミネラルとも呼ばれる。

 

<身体とミネラルの流れ>

口から摂取→腸で吸収→体の細胞で消費→尿・大便にして排泄

 

改めてイメージを共有したい。人間の身体はミネラル・ビタミンを自分で作れない。

外から口を通して取り入れたものが、身体で消費されて、残りが体外に出ていく。

 

生きていくためには、ミネラルのin-outのバランスが取れていることが必須である。この時間軸はエネルギーより長く、ミネラルのうち鉄や亜鉛は200-300日分くらいの体内の貯蔵がある。貯蔵はあるが限りはある。

 ミネラルが不足・欠乏すると身体の恒常性が維持できなくなる。ミネラルは単なるガソリンではなく、身体の恒常性というシステム維持の鍵であり、不足時のイメージは下図のようなゆるやかな体の崩壊である。

 

風の谷のナウシカ 身体が溶けていく巨神兵

4.ミネラルが不足した時 起こること

 

日本人男性におけるMg不足は一般的なようである。しかし、それで病気が多発しているというニュースは聞かない。

厚生労働省 国民生活栄養調査

 

ビタミンやミネラルが不足すると、疾病や成長障害が起こりうる

 

教科書をみると以上のようにまとめられている。あまり詳しく書いているものはない。

 

よってCaやMgが不足していった場合、身体の中で何が起こっているかを想像してみたい。ただし、ここでは急速にミネラルを失った状態ではなく(このケースは低Ca血症や低Mg血症として教科書に記載がある)、非常にゆっくりと足りない状態が持続した場合、身体でどのような反応が起こるか…つまり代償を考えたい。代償とは、本来必要なミネラルが不足してきた場合、身体がその不足を補おうと、ミネラルを節約し、体内の代謝の方法を変えるなどのことで、前述の低Mg血症とは異なる症状につながると考える。

 

表題の土壌にミネラルが少ないとはそういう状態であると思う。

 

① カルシウムが慢性的に不足した場合

 カルシウム体内動態は 骨99% 血液・その他 1% である。カルシウム摂取が不足したとしてもカルシウムの貯蔵庫である骨からカルシウムが動員されるため、不足することにはならない。カルシウムは常に骨からでたり,入ったりをくり返している。主に副甲状腺ホルモン(PTH)、ビタミンD、カルシトニンによって調整され、血清Caは腸管からの吸収、骨吸収と骨形成のバランス、腎臓からの排泄の調整によって一定に維持されている。

 慢性的にカルシウム摂取が不足した場合、上記のホルモンを通して骨に存在するカルシウムが血液に供給される。歯や骨がもろくなる骨粗鬆症が進行する。

 

まとめると、カルシウム不足は骨粗鬆症を起こすが、生体内の恒常性への影響は限定的である。

 

参考:カルシウム、マグネシウムの生体内での挙動 糸川 Ingrganic Materials, Vol.1,No252(1994)

 

② マグネシウムが慢性的に不足した場合 

マグネシウムとは人にとって欠かすことのできない非常に大切なミネラルであり、教科書には以下のようにまとめられている。

Mgは種種の代謝の基本的反応の必須イオンとして重要な役割を果たし、300種類以上の酵素がその活性化にMgを必要とします。特に、リン酸伝達反応とATPが関与する酵素反応にMgがアクチベーターとして必須であることから、細胞膜機能、アミノ酸の活性化、DNA合成、タンパク質合成、リン酸化筋収縮など細胞レベルのエネルギー代謝に不可欠です。  

  最新臨床検査のABC 日本医師会雑誌

 

そしてマグネシウム欠乏は、以下のように記載される。

マグネシウム欠乏の症状の主要なものは神経・精神障害と循環器障害である。神経症状としては神経過敏症,振戦(筋肉の不随意的なふるえ),テタニーなどが認められる。精神症状は抑うつ症,妄想,不安感,興奮,錯乱などが見られる。循環器障害は不整脈で,期外収縮,頻脈,心室性細動が起こる。 

 

しかし,このような症状は血中のマグネシウム低下により出現するものであり、低マグネシウム血症である。低マグネシウム血症による症状はマグネシウムの補充により速やかに改善するため、血液という局所での急性変化により引き起こされるものである。

 

一方で、体内マグネシウムの相対的不足が続いた場合は、ただちに血液中のマグネシウム不足とはならない。血液内と血液外のマグネシウム欠乏は分けて考える必要がある。

 

マグネシウムの体内動態は 骨65% 筋27% その他の組織6-7% 細胞外液1% である。マグネシウムについても骨が貯蔵庫となっており,マグネシウムが欠乏すると骨からマグネシウムが遊離され利用される。副甲状腺ホルモンは骨からカルシウムと共にマグネシウムの遊離を調節する作用を有すると考えられる。しかし,マグネシウム欠乏はつねにカルシウム代謝に影響をおよぼし,副甲状腺ホルモンはカルシウム代謝により敏感であるから、単独のマグネシウム代謝に対する作用を見いだすことはきわめて困難との報告されている

 

ヒトの体内でエネルギー源となるもっとも重要な酵素であるATPaseマグネシウムを必要とする酵素であり,まず基質のATPがマグネシウムと結合し,ついで酵素がはたらく。マグネシウム不足は細胞がエネルギーを産生する機構に影響するにもかかわらず、ヒトは血清マグネシウム濃度を維持するための特異的なホルモンは存在しない。腸管・尿細管における局所的な吸収・再吸収の調整により、血清マグネシウムは一定の範囲に維持されている。

 

参考:日本内科学会雑誌 111:934-940,2022.

 

一方で、体内Mg量と血清Mg値は必ずしも相関しないとされている。

 

参考:カルシウム、マグネシウム代謝の考え方 日腎会誌 50(2):91-96, 2008

 

つまり、Mgは生命維持に必要であることからホルモンなどを使わなくとも体内Mg欠乏が直ちに血清Mg値に反映されないような、何らかの代償機構が存在することが示唆される。大幅な低マグネシウム血症は低カルシウム血症を引き起こすため、この場合は、カルシウム濃度の調整として骨からの供給が働くと考えられる。私は、その前のレベル、相対的に体内マグネシウムが不足した状態でも働く代償があるのではないかと思う。そして身体のMgは骨以外の臓器では筋肉に多い。

 

Ca摂取量は増えているが、Mg摂取量は減っている

引用:マグネシウム不足は突然死にも関連するの?〜インスリン抵抗性を介して糖尿病の原因に〜 | メディカルノート (medicalnote.jp)

 

 大規模な疫学研究にて、Mg摂取量が不足すると、メタボリックシンドローム(メタボ)や2型糖尿病の発症、糖尿病性腎症の悪化、高血圧、血管の石灰化の進行、心筋虚血や危険な不整脈による突然死のリスクを高める可能性が指摘されている。

 

インスリン抵抗性

 

なぜマグネシウム不足が持続すると糖尿病になり易くなるのか。そのKey wordはインスリン抵抗性です。

 

マグネシウムが不足すると血糖を下げるインスリンの作用が減弱=インスリン抵抗性が高まり、血糖が上昇します。そして、インスリン抵抗性が生ずるとマグネシウムが尿中に失われ易くなり、摂取不足とあいまってマグネシウム不足・インスリン抵抗性がさらに増悪、糖尿病に進行していきます。

 

細胞内マグネシウムインスリン作用のカギとなる

 

引用:マグネシウム不足は突然死にも関連するの?〜インスリン抵抗性を介して糖尿病の原因に〜 | メディカルノート (medicalnote.jp)

 

血中マグネシウムインスリンが骨格筋の細胞の表面にある「インスリン受容体」に結合し易くしています。インスリンが正常に働くためにはインスリン受容体にしっかり結合しなければなりません。血中のマグネシウムが不足しているとこの結合がうまくゆかなくなります。

 インスリンインスリン受容体にしっかり結合すると受容体がリン酸化され、血中の糖分(グルコース)を骨格筋細胞内へ取り込む輸送体GLUT4を細胞膜に移行させ、血中のグルコースを骨格筋へ取り込み、エネルギー源として効率よく使えるようになります。一方、インスリン受容体のリン酸化、GLUT4の細胞膜への移行には細胞内の十分なマグネシウムの存在が不可欠で、細胞内マグネシウムが不足するとこの働きがうまくゆかなくなります。従って、血中および細胞内のマグネシウムが不足すると、糖分(グルコース)を骨格筋に効率よく取り込みエネルギー源として使うことができなくなる、つまり、インスリンが効きにくい、抵抗性が生ずることになります。

 

他方、インスリン抵抗性は、腎尿細管でのマグネシウムの再吸収を減少させ、マグネシウムの尿中排泄を増やし、マグネシウム不足を持続させるという悪循環を形成します。

 

以上より、体内でマグネシウム不足している状態とは、マグネシウムが細胞内で不足している状態と言い換えることができる(血液中ではない)。

 

話が複雑になってきたため、いったんここで切りたいと思います。

ALSをはじめとした神経変性疾患のための食事療法

ALSをはじめ、神経変性疾患を患い戦っている方に私はこの本を強く勧めます。誤字脱字があったり、解釈について同意できない点も多少ありますが、現代医学で「治療法がありません」と医者に見放された患者達が必死に考え努力した血と涙の末の強い信念を感じたからです。ここで紹介されているいわゆる自らの経験を主体とした治療法は実は日本をはじめ古来から行われてきた東洋医学」そのものであると思います。誰もが医食同源は一度は聞いたことがあるでしょう。

 

以下同書を私なりの解釈にして紹介していきたいと思います。

ALSがタイトルにありますが、多発性硬化症認知症などいわゆる神経疾患、そして癌なども考え方としては同じように応用できると思います。そして興味を持たれた方はぜひ本書を手に取ってみてください。

 

1.医学的アプローチの分類

まず初めに、基本的な病気のとらえ方について整理します。本書では医学アプローチについて現代医学(西洋医学)、東洋医学、機能性医学と分類しています。機能性医学という新しい分野があるとの考えで語られていますが、私の考えは機能性医学は東洋医学に含め、「西洋医学」、「東洋医学の2つでよいと思います。

 前者の医学は人間を機械のロボットのようにとらえます。ロボットのパーツのように人体を臓器に分解して考えます。思考法は善悪二元論で、ある病気を診るみるとき、もともとの問題のない「善の部分」と問題が生じた「悪の部分」に分けます。例えばもともと問題のない善の身体に悪の細菌による感染により発症する感染症。これに対しては抗生剤で悪い細菌を駆逐しようとします。例えば、もともと問題のない善の臓器に悪い癌ができる。この悪い癌を切除する…などです。もっとも、人体も免疫反応を起こし細菌や癌に対して発熱など戦うための生体反応を起こしているわけですがそこはあまり強調されません。西洋医学のメリットは単純化されていてとても理解しやすい事と、目覚ましい効果があることだと思います。

 しかし、西洋医学感染症をはじめとした急性疾患に十分な効果が出た一方、西洋医学では成果が上がらない病気も残りました。それがALSをはじめとした神経変性疾患などの難病や自己免疫疾患、高血圧や糖尿病などの慢性疾患ではないかと思います。

 後者の医学、東洋医学では病気を善と悪にようにはとらえません。人間を生態系から俯瞰してみて、気などが循環する一つのシステムの一部とらえます。病気は一部の臓器ではなく、人体全体が病気であると考え、善と悪ではなく、気・血・水が不足したり停滞して、「気などの循環が滞った状態」という理解をします。言い換えると、「悪い病気を治す」という考え方をせず、「病気で崩れた生体バランス・循環を取り戻す」、「病気があったとしても、共に生きる」というアプローチを行います。

 

西洋医学は部分・静的、東洋医学は全体・動的にとらえるのですが、なかなかイメージを共有することが難しいようです。神経変性疾患・自己免疫疾患や高血圧や糖尿病など多因子が複雑に関与して生じる病気については西洋医学と共に、このようなアプローチも有効な選択肢になるのではないかと私は思います。

 

以下の本は西洋医学の負の面をわかりやすく説明しています。多くの薬が対症療法であるという事実と、対する東洋医学の違いへの理解が深まるかと思います。

 

 

2.まずは西洋医学

本書では標準的西洋医学治療を受け、それでも症状が進行していく状態の患者が取り組んだ治療法として食事療法を紹介しています。西洋医学では根治できないから、他の方法にすべて切り替える、ということは決して勧めないことを確認しておきたいです。

 まずは、しっかり標準治療を勉強した上で、さらに東洋医学的な要素も入れていること、それも自らの創意工夫の下で進めていくことを提案しています。なぜ人によって違うかは、西洋医学では病名=治療法ですが、東洋医学では病名=治療法ではありません。よって、万人に同じような特効薬は存在しないのです。

 

 現在、西洋医学は標準化といってどこの病院に行っても同じ考え方で治療を受けることができるように情報が発信されています。それが最も集約されたものが「ガイドライン」です。おそらくあなたの病気についても「ガイドライン」「治療指針」があるはずですからまずはそれをよく読んで勉強することから始めてください。今の治療の効果と限界を知ることから次のステップがはじまります。

 

3.食事療法の前に

 

ではなぜ食事療法なのか。

え、食事?それだけ? と思うのが正直な感想と思います。

しかし、この食事について、私たちがいかに無知であるか知ることで直感的に理解していただけたらと思います。

 

現在、ALSの原因は現在わかっていません。

そこで、自分なりに原因の仮説を立てることから治療が始まります。

 

「ALSの原因は神経系に貴金属が蓄積した結果、ウイルスやバクテリア、真菌などの病原体が繁殖しやすい環境が作られる。そのため、体の神経系統が徐々に侵されていく。」 ー セルヒオ(ALSリバース達成者)

 

これは患者さんが自ら必死で勉強をして立てた仮説であるが私はそれなりに納得できる仮説だと思います。そして、ALSリバースを長年研究しているオンラインサポートグループはALSの原因について、19項目を挙げています。ここでは著者の説明を私なりに改変し、整理して記載します。

 

原因① 重金属の蓄積

グアム島のチャムロー族はソテツの実を常食としており、彼らにALSなど神経変性疾患が多発する原因としてソテツの食習慣があるのではないかと考え調査が行われました。魚を取って食べる習慣がなく、土壌や飲料水にカルシウムやマグネシウムの含有量が乏しいこと、アルミニウムやマンガンなどが多く含まれていることなどが指摘されましたが、明確な原因はわかっていません。現在は食生活が欧米化し、ALSの多発はなくなっています。

 

アルミニウム(Al)

今のところ身体への必須性が証明されていません。臨床的には蓄積による中毒が問題となり、神経毒性があるといわれ、筋萎縮性側索硬化症アルツハイマー病においても大脳灰白質にAlが多く蓄積しています。

 

ALSが多発した紀伊半島南部地域の ALS 患者の脊髄内 Mn 濃度の高値、脳内 Al 高値、毛髪中の Mn, V 高値が示されています。 

参考:Kihira T, Okamoto K, Yoshida S, et.al. Environmental Characteristics and 
Oxidative Stress of Inhabitants and Patients with Amyotrophic Lateral Sclerosis in a 
High-incidence Area on the Kii Peninsula, Japan. Intern Med 2013;52:1479-1486

 

水銀中毒

歯の詰め物として使われるアマルガムには約50%の水銀が含まれており、最も有害な物質の一つで、口の中で蒸気化し体内に吸収される。日本では水俣病が有名です。

 

原因② 重金属の不足

食生活の欧米化に伴って、蛋白や脂肪など栄養状態が改善した一方、ミネラルの摂取量の不足や腸での吸収不良などが問題となっています。

 

マグネシウム(Mg)

Mgは種種の代謝の基本的反応の必須イオンとして重要な役割を果たし、300種類以上の酵素がその活性化にMgを必要とします。特に、リン酸伝達反応ATPが関与する酵素反応にMgがアクチベーターとして必須であることから、細胞膜機能、アミノ酸の活性化、DNA合成、タンパク質合成、リン酸化、筋収縮など細胞レベルのエネルギー代謝に不可欠です。

 

アメリカ合衆国の成人60%は必要なMgを摂取できていないと報告されています。日本人においても国民健康栄養調査では不足しやすいと推測されています。

 

マグネシウム摂取量を増加させても尿中マグネシウム排泄量は増加せず,大便中のマグネシウム量が増加することから,腸管からのマグネシウムの吸収に限界があり,一度に大量に摂取しても吸収されていない。

 

参考:カルシウム、マグネシウムの生体内での挙動 糸川嘉則 Inorganic Materials, Vol.1,No.252(1994)

 

1965年和歌山医科大木村潔教授が、紀伊半島南部地域の河川中マグネシウム、カルシウム濃度が大変低値であることに注目し、ALSとマグネシウム、カルシウム摂取不足との関連を明らかにしました。

参考:Kimura K. Studies of amyotrophic lateral sclerosis in the Kozagawa district of the Kii peninsula, Japan. (epidemiological, genealogical and environmental studies).

 

Mg排泄を促進する原因:ストレス、カフェイン、オメガ6の油、高脂質、高脂肪の食事、精製糖質、アルコール

 

参考

・ストレスによる尿中マグネシウム排泄の増大 西牟田守ら.マグネシウム 1988, 7:123-32.

・Magnesium deficiency in alcohol addiction and withdrawal. Shane SRら.Magnes Trace Elem 1991,10:263-8. 

・濃度の高いコーヒーを摂取すると、マグネシウムの尿中排泄量が増加する(県立広島大学人間文化学部 紀要 vol3 1-6(2008))

・日本の水道水~硬さしらべました 20210629watanabe_horisoubun01.pdf (u-tokyo.ac.jp)

 

銅(Cu)

生体内で銅酵素、銅蛋白として存在して鉄代謝、中枢神経機能、エラスチンやコラーゲン合成など結合組織代謝、骨代謝メラニン生成、過酸化水素除去などに重要な役割を果たしています。

 

亜鉛(Zn)

生体のあらゆる組織内に存在して、約300種以上の酵素の活性中心に存在して、核酸の生合成、蛋白代謝、細胞膜の構造とその維持などに重要な役割を果たしています。

※ 亜鉛のキレート作用を有するポリリン酸ナトリウム(歯科ホワイトニング)、フィチン酸、EDTAなど(食品添加物や薬剤)の連用は亜鉛欠乏の原因となります。

 

参考

紀伊半島における筋萎縮性側索硬化症の疫学的, 遺伝学的ならびに地理医学的研究 木村潔 

Kimura K (1965 )Studiesof umyotrophic lateralscterosis intheKozagawa districrQf the KiiOcnunsutu Japan.Epidcrniologi−cal 、genea]ogical and environniental sutadies ・Aaka }/amu Me Rep9,177−192

・ミネラルウォーター -健康にとって美味しい水は名水か- 安井 昌之  機能水研究 Vol.4(1), p.11-16, 2009

 

例えば以下の商品はポリリン酸ナトリウムを含みます。

 

原因③ フリーラジカル・酸化ストレス

運動過剰刺激・脳震盪

フットボール選手など長年アスリートとして活躍した人たちのALS罹患率は、アスリートでない人に比べてかなり高いことがわかっています。身体的なストレスが活性酸素フリーラジカル)を大量に発生させ、身体に炎症を与えると考えられています。

 また、脳震盪を起こしやすいスポーツは、脳血管と脳の間の物質の移動を選択的に制限する仕組みであるBlood brain barrier(血液脳関門)の損傷を起こしやすく、本来脳には届かない物質が脳内に侵入し、障害が起こると考えられています。

精神的ストレス

精神的なストレスは、フリーラジカルを大量に発生させ、身体に体に炎症を起こします。

参考:ストレスと不安が、尿中のマグネシウム排泄量を増加させました。ストレスはさまざまな作用により身体の恒常性を壊します。(Magnes Res.2006 Jun;19(2):102-6)

睡眠不足

睡眠不足が身体に悪いことは議論の余地はないかと思います。朝6時に起きて夜10時までに寝る規則正しい生活は、メラトニンの産生を促します。メラトニンフリーラジカルを破壊する抗酸化物質グルタチオンを作ります。

 

原因④ 化学物質

殺虫剤、除草剤、殺菌剤

殺虫剤、除草剤、殺菌剤などは人体に毒性の高い化学物質を含んでいて、土壌、食物などを通して体内に蓄積し、私たちの食生活と健康に大きな影響を及ぼしています。

スモッグ

大都市をはじめ空気の質が悪いと、経気道的な化学物質の吸入が肺から血液に入り、健康に大きな影響を及ぼしています。

クリーニング用品

洗濯洗剤、食器用洗剤、ハンドソープ、歯磨き粉、クリーニング用品などは天然には存在しない化学物質です。経皮的な身体への吸収もありますし、口腔粘膜からの吸収など体内に取り込まれるものですが、体内での作用は十分にわかっているのでしょうか。

化粧用品

国によって基準は異なりますが、鉛や他の毒性成分を化粧品に混入することが許されています。シャンプー、リンス、ハンドクリーム、日焼け止めクリームからも体内への吸収があります。

プラスチック

近年、日本でもマイクロプラスチックの残留が報道されるようになってきました。プラスチックは身体には異物です遺物です。小さいプラスチックであれば飲料水に浸透します。暑い車の中に置き去りになっていたプラスチックボトルの水はプラスチックが浸出しているため飲まないようにという報告もあります。

また、食べ物をプラスチック製の容器で電子レンジで温める場合も、食べ物に浸出するので使わないようにしましょう。

水道水

アメリカの多くの都市の水道水にはフッ素が混合されています。日本でも、歯磨き粉にも入っています。フッ素は神経毒です。

原因⑤ 肝臓の機能不全

肝臓はデトックス(解毒)のために重要な臓器で、肝臓が正しく機能していないと毒素が体内に蓄積することになります。肝臓にとっての2つの大敵はアルコールと小麦で、小麦はグルテンを含みプラーク化し、肝臓機能を遮げます。(後者の医学的な正確性は不明)。

原因⑥ 感染症

ライム病やウイルス感染症

未治療のライム病やEBウイルス(エプスタイン・バーウイルス)など細菌・ウイルスなどの感染症がALSに大きく関与しています。

 

新型コロナウイルス罹患後症状ではウイルスの持続感染や人体への悪影響が研究されています。

参考:Unexplained post-acute infection syndromes, nature medicine,Jan Choutka .et.al

罹患後症状の4つの仮説

カビ

カビは土壌をはじめ、私たちの生活空間に当たり前に存在していますが、人体に悪影響を与えていることは間違いありません。

 

原因⑦ スタチン薬(コレステロール低下薬)などの処方箋の薬

Joseph B.Yospeh氏の書いた「Statin-induced Neuropathy and Myopathy」という本では、スタチン薬がどのように神経に影響し、ALSの原因となり得るかを説明しています。医薬品は天然の産物ではなく、毒素として排出するものです。

 

原因⑧ リーキーガット

腸管壁のバリアが壊れて、腸内の細菌や老廃物が体内に入ってしまう現象です。腸管壁浸漏(Leaky gut)は腸管免疫機能の破綻からリポ多糖(LPS)などの毒素が肝臓に流入する。結果として、肝臓が賦活化し、肝疾患など全身に影響を与える。

参考:日内会誌 109:27-33,2020

 

以上、8項目にまとめてみました。しかし、それぞれが相互に関わりあっており決して単独の独立した原因ではありません。

 

4.食事療法

 

前章のさまざまな原因を踏まえて行うべき、治療目標として以下の4つをまとめています。

1.ミトコンドリアの過労の修正

2.免疫細胞の機能不全の修正

3.身体にかかる毒素の負荷の修正

4.ウイルス性や他の慢性感染症の免疫細胞のコントロール

 

本書ではこの治療目標に取り組む心構えとしてエリックエドニーという59歳でALSと診断され、85歳まで楽しい人生を生きた患者さんの自伝を紹介しています。

毎日症状が悪化していく恐怖の中、心が折れず前に進み続けることは至難の業でしょう。それでも同じ病気と闘った患者さんの自伝を読み、そのたびに勇気と知識を得て、前に進み続ける。その難しさを十分に理解した上で、プロトコール(治療実施計画)が大切であることを訴えられています。

 

プロトコールは階段に分けると

 第一段階 病気の進行を止めること  Stop the progress of ALS

 第二段階 本来の健康状態に戻すこと Restore the body

いきなり治療の目標をALS症状のリバースすることではなく、まず病気の進行を遅らせ、止めることを第一段階とし、そこから次の目標をALS症状をリバースさせることにすればよいとしています。

 そして、治療よりもさらに大切な事は、PMA(Positive Mental Attitude)すなわち前向きな心構えです。どんな治療も実行できなければ絵に描いた餅です。これは治療をやり遂げるための必須の要素となると私も思います。

 

これらを踏まえた上で、著者が説明する治療の原則は4つです。

1.治療にあたり、ゴールを決めること

2.ゴールに向けてひたすらポジティブに頑張ること

3.すべての治療が効くとは限らないこと

4.実践している治療を信じて前に進むこと

人それぞれ身体の状態は異なっているため、すべての人に同じように効果があるような治療はないと割り切ることが必要と思います。そもそも前提として治療には試行錯誤が必要であり、自ら学び、考え、前に進み続けることが必要なのです。

 

If you are not open to new ideas, then you will never improve your ALs condition.

あなたが新しいアイデアを受け入れなければ、あなたのALSの症状は決して改善しない ー エリック

 

5.マークの食事療法 Mark’s Protocol

 

2011年 ALSと診断され、胃瘻造設と気管切開を行いました。人工呼吸器を24時間使い、最終的に眼球以外動かせなくなります。しかし、現在、マークは自分で食事をし、歩行器を使わずに歩くまでリバースしています。マークは3人の神経内科の医師に診てもらい、一人は世界的に有名なメイヨークリニックの医師でALSの診断で間違いないと言われていました。

 マークの治療は妻のリサによって行われます。栄養剤をやめてオーガニックベースに変えました。精製された砂糖や体に炎症を与えそうな成分は入っておらず、バランスの取れたビタミン・ミネラルの入ったプラント(植物)ベースの栄養剤でした。さらにサプリメントや野菜スムージーなども与え始め、胃瘻造設してから3年目にリバースが始まりました。

 リサは、マークの身体に蓄積された毒素や老廃物が、クリーンな食物によって一掃されるまでそれなりの月日が必要だったと言っています。まさに、食べ物は薬なのです。

 

現在のマークの食事療法

 

基本的に避ける食品:砂糖類、グルテン(小麦粉など)、穀物(できるだけ避ける)、魚介類(とるなら水銀含有量が低い魚介類)、乳製品、卵、加工食品、化学調味料(添加物も)、人工甘味料アスパルテームなど)、人工着色料、酒類、タバコ

 

グルテン

グルテンは小麦、ライ麦、大麦中のたんぱく質で、水を加えることで粘弾性が変化するためパン、パスタ、うどん、お菓子などで使用されている。消化されにくいため腸の粘膜に張り付いてしまい粘膜が炎症を起こし、腸内環境が悪化し、栄養の吸収力も落ちる。以下の本ではグルテンがおこす脳の炎症について詳しく記載されています。

 

乳製品

アメリカでは乳牛にホルモン剤抗生物質が投与されたり、資料として人が食べられないような農業や化学肥料がたっぷりと含まれた粗悪な飼料を与えている場合があります。そのような牛の乳製品を食べたいでしょうか。抗生物質は私たちの腸内の善玉菌を殺してしまい、腸内環境が乱れます。

砂糖

砂糖は身体に炎症を起こします。血糖値を上げる、腸内環境を妨げる、口腔衛生を悪化させ繁殖した細菌が血液に入る、抗炎症作用を持つケトン体の産生を減らす、脂肪肝を増やす、体重増加などによります。

化学調味料

うま味の代表であるMSG(グルタミン酸ナトリウム)とは、日本で美味しいと言われる食べ物のほとんどに使われています。加工食品やソース類、めんつゆ、インスタント味噌など様々。日本の食品添加物の表示欄には「アミノ酸調味料」や「アミノ酸等調味料」とも書かれています。海外ではMSGと聞くとマイナスのイメージしかないそうです。

 

6.アメリカALSオンラインサポートグループが推奨する食事療法

 

避ける食品:グルテン(小麦粉など)、乳製品、砂糖類(はちみつ、メープルシロップはOK)、加工食品、人工調味料(特にMSG)、人工甘味料(特にアステルパーム)、ジャンクフード、揚げ物、酒類、タバコ類、ソフトドリンク

 

肉類

牛肉 牧草で飼育された牛肉

鶏肉 放し飼いで育てられた鶏肉

豚肉 推奨しない

魚類

野生で捕獲された魚で、水銀含有量の多いマグロなどの大魚ではなくタラやサケくらいの大きさ、それより小さい魚を勧める。アメリカ産の養殖魚は推奨しない。

炎症を起こす食べ物

穀物、小麦、トウモロコシ

遺伝子組み換え食品 GMO foods

害虫に強い性質や栄養素を上げる効果、除草剤に強い性質などを新たに加えている。一方で、アレルギーの原因になったり、免疫疾患や不妊などさまざまな健康被害の調査報告が世界中である。

ナッツ類

ピーナッツはカビが生えやすいので避ける

ブラジリアンナッツはセレニアムが豊富でお勧め

※ナッツ類はカビが生えやすいので冷蔵庫で保存することをお勧めする

油類

ココナッツオイル

オリーブオイルを使って調理することをお勧めする

発酵食品

サワークラフト、キムチなどお勧め

オーガニック有機栽培野菜、果物

アメリカの農産物は残留農薬が多い

できるだけオーガニックの野菜を食べる

 

食事療法のまとめ

 (特定の食材など)栄養が偏った食事ではなく

  栄養のバランスのとれた食事が大切