脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

私のリハビリ体験⑥ 認知的不協和

リハビリセラピストへ伝えたいメッセージを込めて私の体験をお話しします。

 

 

「認知的不協和」という言葉を知っていますか?

 


子どもを対象とする教育心理学では有名な言葉で、人は自分の思惑と現実が矛盾するとストレスを感じ、その矛盾を解消しようとする心理が働くという意味です。

 


例えば、子どもが頑張って絵を描いていると、その姿を見て親はつい、「えらいね」と自分の気持ちをストレートに褒めてしまいます。

 


しかし、教育心理学ではこれはまずい対応になります。

 

 

絵を描く子どもは純粋に好きだから書いていたわけで、何度も褒められると、ストレスを感じ、絵を描くことの興味を減じてしまい、書くのをやめてしまうことがあるそうです。

 

 

自分の認識と違うことを働きかけられるとその矛盾を解消しようと心は動きます

 

 

これをリハビリテーションの現場に置き換えてみます。

 

私は脳梗塞を発症し、身体が思うように動かなくなったことで自分の身体イメージと現実の身体に大きな矛盾を抱えました。

 

認知的にとてもストレスが高い状態です。

 

現実をすぐに受け入れられず混乱し、いろいろ理由をつけては現実を否定したり肯定したりしていました。

 

そんな時に、病院では「あの患者はまだ病識がない。」「現実を受け入れて、準備して欲しい」という言葉を見聞きしました。

 

病気の現実を受け入れ、治らない身体という答えを受け入れられればその時の心は楽になりますが、それはまた別の生活などへの不安と向き合うことになります。決して、簡単に「身体は治らない」を受け入れられるようなものではありません。

 

そんな情緒が不安定な私に対して

 

 「報告での予後はよくないが、利き手側はよくなりやすい」などセラピストの励ましがむしろショックなことが多々ありました。

 

悪気がないことはよくわかります。しかし、病的な精神状態では患者には、前半部分しか心に残りません。

 

 

現実をわからせようと? 予防線をはるセラピストがいることは想像に難くありません。しかし、

 

患者に必要なのは現実を受け入れる手助けではなく、落ち着いてリハビリに打ち込める希望であると思います。

 

 

動かない身体という現実は、患者にとってはいつもそばにあるのですから。

 

パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学

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