脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

中年に運動は薬である

健康維持に運動が大切である。

そんなことは誰でも知っている。

 

わずか30分、週に5回、心臓の鼓動が少し速くなる程度の運動をすればよい。

時間を小刻みに積み重ねて週に150分とするのでもよい。

 

運動を推奨する研究報告が増えるに従い、特に中年期の身体活動が心臓と脳の健康の維持に重要であることが、明確になってきている。

しかし、米疾病対策センター(CDC)の報告によると、50歳以上の成人の約3分の1は、仕事以外では身体活動をしていない。

 

人々が運動を行う上での最大の障壁は、時間がないことだ。

中年期の人たちは通常、組織内で責任のある立場にあり、子育てや親の介護など、複数の役割を担っている。そして、それらの全ては、運動に取り組もうとする意志を弱める『倦怠感』に結び付く。さらに、自分自身のために時間を使うことに、罪悪感を覚える人も少なくない

 

Lachman氏はPsychology & Healthに掲載された論文で、目標を設定して計画的に運動に取り組むと、「時間がない」と信じていた中年期の人でも運動の目標を達成する自信が芽生え始めることを確認した。

ボストン大学のVanessa Xanthakis氏も、会議などの避けられない仕事があるのと同じように、運動する時間帯をスケジュール帳に書き込み『時間をロック』してしまうことをすすめる。毎日が無理なら、週に2~3回から始めればよいとしている。

 

Lachman氏は上記の研究とは別に、友人や家族をはじめとする自分以外の人間や社会と積極的につながることも、モチベーションの維持に重要であること「Research on Aging」に報告している。ポイントは運動以外の好きなことと運動を組み合わせて実行することだ

 

また同氏は、「野心的な目標を立てる必要はない。個人個人の運動能力に合わせて始めることだ。全ての瞬間を大切にしてほしい」と述べ、いくつかの具体的な工夫を紹介している。

 例えば、エレベーターの代わりに階段を利用する、子供を学校に連れて行く、同僚との打ち合わせは会議室の椅子に座る代わりに散歩しながら行う、商業施設では車を駐車場の最もはずれに停めるといったことだ。「これら一つ一つの効果はわずかでも、積み重ねれば大きな運動量になる」と同氏は語る。また、「必ずしもジムに行く必要はなく、ただ歩くだけでも良い。歩くことは全くコストがかからないのに大きなメリットがある」とウォーキングの効果を強調している。

 

 Lachman氏らが行った研究では、歩くことのメリットは身体的な面にとどまらず、多く歩いた日は気分が良くなると回答した中年期女性が少なくなく、歩数の多さが睡眠の質の高さとも相関していることが示された。

より多く歩くことで、肉体面、精神面のいずれにも良い影響が現れる。動かずにいたのでは、それらのメリットを逃してしまう

 

これらの研究は、多くの方が過去の体験からも素直に受け入れられる結果だろう。

 

さらに、Xanthakis氏は運動不足のことを、「心臓と脳の健康リスク因子の中で、人々が自分で完全にコントロールできる因子だ」と表現している。Journal of the American Heart Associationに、中年期に定期的な運動をして健康的な食事を取ることで、後年の心血管代謝疾患のリスクを抑制可能なことを報告している。

 

血圧やコレステロールが高くなってから、それらを短期間で下げることは容易でない。しかしわれわれは、自分自身で運動量を増やしてそれらのリスクをコントロールすることができる

 

 

 

 

引用:American Heart Association