脳梗塞後の世界で生きる日記

患者視点でリハビリについて情報発信します

脳卒中後の課題指向型リハビリは従来作業療法より劣る!?

急性期リハビリテーション後、強度・回数を増した課題指向型リハビリを行うことで通常リハビリと比べて機能回復が良好であることが示されていた。
 
今のリハビリテーションの最先端のように感じていたが。

 

要旨

 

  米国Carolee J. Winstein氏らが361例を対象に行った無作為化試験ICAREでは、脳卒中後、中等度の上肢後遺症が認められた患者のリハビリテーションについて、課題指向型リハビリテーションプログラム(Accelerated Skill Acquisition Program:ASAP)がもたらす機能回復は、従来型作業療法(usual and customary care:UCC)と比べて同等もしくは低いことが明らかにされた

 

方法 

 

 試験は単盲検にて、脳卒中後、運動機能に中等度の後遺症が認められた外来患者361例を対象に行われた。

  ASAPは基本原則に基づくプログラムで、機能障害にフォーカス、特異的課題、強度、必要度、自発性、患者中心などに留意し、1時間の介入を週3回10週間にわたって計30セッション行うというもの。

 研究グループは被験者を、

A:ASAPを行う群(119例)

B:ASAPと同量(30セッション)のUCCを行う群(DEUCC、120例)

C:UCCのモニタリングのみを行う群(UCC、122例)の3群に無作為に割り付けた



 主要アウトカムは、Wolf Motor Function Test(WMFT、平均15の上腕運動と手作業からなる)の時間スコアの12ヵ月間の変化であった。

 副次アウトカムは、WMFT時間スコアの変化(臨床的に意義のある最小変化量[MCID]は19秒)、Stroke Impact Scale(SIS)上肢機能スコア(MCIDは17.8ポイント)が25ポイント以上改善した患者の割合などだった。

 

結果

12ヵ月間のWMFT時間スコアの変化に有意差なし

 

 主要アウトカムのintention-to-treat解析(361例対象)の結果、各群の平均スコアの変化は、ASAP群が2.2から1.4への変化(差:0.82)、DEUCC群は2.0から1.2(差:0.84)、UCC群は2.1から1.4(差:0.75)で、有意な群間差はみられなかった(ASAP vs.DEUCCは0.14、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.33、p=0.16/ASAP vs.UCC:-0.01、-0.22~0.21、p=0.94/DEUCC vs.UCC:-0.14、-0.32~0.05、p=0.15)。

 副次アウトカムについても、ASAP群のWMFT時間スコアの変化が-8.8秒、SIS改善患者割合73%、DEUCC群はそれぞれ-8.1秒、72%、UCC群は-7.2秒、69%だった。ASAP vs.DEUCCのWMFT時間スコア差は1.8秒(95%CI:-0.8~4.5秒、p=0.18)、SIS改善患者割合の差は1%(-12~13、p=0.54)、ASAP vs.UCCのWMFT時間スコア差は-0.6秒(-3.8~2.6秒、p=0.72)、SIS改善患者割合の差は4%(-9~16、p=0.48)、DEUCC vs.UCCのWMFT時間スコア差は-2.1秒(-4.5~0.3秒、p=0.08)、SIS改善患者割合の差は3%(-9~15、p=0.22)であった。

 

引用:Winstein CJ, et al. JAMA. 2016;315:571-581.

 

 

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